Uranometria


現在私たちが知る星座は古代メソポタミアを起源とし、ギリシャで体系化されたものを基にしていますが、古代エジプトやアラビア、中国など世界各地にも独自の星座文化があり、互いに影響を与え合ってきました。星座は単なる星の並びではなく、物語や運命、世界の秩序を読み解く手がかりとして捉えられてきました。本作では、国際天文学連合によって定められた全天88星座のうち、作品が展示された9月頃に東京で実際に観測できる約20個の星座を選び、紫外線に反応して蛍光する糸によって天球状のドーム内に描き出しています。星と星を結ぶ、目には見えない「想像の線」を可視化することで、現実と仮想の境界は揺らぎ、私たちの感覚を静かに揺り動かします。

 

技術的な面では、まず3Dソフトで各星座のデータをポリゴン形状へと変換し、3Dプリンターで出力して星座のオブジェクトを作成します。そのオブジェクトの各ポリゴンの頂点にピンを刺し、ピン同士を紫外線に反応して蛍光する糸で結んでいくことで、暗闇の中でポリゴン形状として浮かび上がる星座の彫刻作品が完成します。デジタルとアナログ、現代技術と手仕事の工程を往復する制作過程も、作品の特質において重要な要素になっています。

 

天球状のドーム内部に静かに浮かんだ、ポリゴンとして再解釈された星座たちを見上げる行為は、星と世界各地で何千年も続いてきた、星を結びながら物語を紡ぐ営みを思い起こします。古代の人々も、現代の私たちも、国境を越えて世界中で星空を見上げる人々も、同じ星々を見つめ、物語を描き続けてきました。異なる地域で見える星の違いはあっても、星座を想像し物語を紡ぐ営みは世界共通です。その普遍的な体験が、時空や国境を超えて共感や平和への祈りとして響くことを願っています。

 

作品タイトルの「Uranometria(ウラノメトリア)」は、天空や宇宙を意味する古代ギリシャ語の「urano」と測量を意味する「metria」を合わせた造語で、1603年にドイツのヨハン・バイエルによって出版された星図書のタイトルに由来します。現代まで続く人類の想像力をポリゴンという幾何学的手法で可視化することで、宇宙の秩序や構造を測り、静かに体感できるようにするという思いが込められています。


3Dプリント樹脂、糸、ピン、合板、UVライト

ムーンアートナイト下北沢 [東北沢駅屋上・東京] 2025
Photo: Masataka Tanaka and others